SHO-RO
鐘楼の構造形式を参照した囲炉裏テーブル
2m四方のテーブル型の囲炉裏である。 伝統社寺建築のひとつ「鐘楼(しょうろう/鐘つき堂)」から、形態・構造形式について着想を得ている。囲炉裏の天板は、鐘楼の屋根を支える「扇垂木(おうぎだるき)」をモチーフとし、中心から角材が放射状に広がる形状としている。 天板は板材を使わない木組み技術の結晶体である。 計160本の角材は宮大工が一本一本の木の癖を読みながら鉋をかけ、0.01mm単位の精度で微調整を行っているため、角材で組んだにも関わらず、一切の隙間が出ないように仕上げている。 天板を乗せる土台部分もほぼ全て木組みとしており、4本の柱(脚)は古来の技術である槍鉋掛けを施し、独特の表情に仕上げている。 「鐘楼」は、中央に吊るされた鐘の重さで屋根の構造材の端部を下向きに引っ張ることで、全体構造が安定するという構造的特徴を持つが、本作でもその構造形式を踏襲し、ステンレス製の炉に灰を溜めることで、灰の重量が炉を介して160本の角材の端部を下向きに引っ張り、全体がより安定する形式としている。 暖房、調理、照明、団欒など様々な機能のために日本人の生活に寄り添ってきた囲炉裏。 本作は、囲炉裏本来の形状を現代の生活スタイルに合わせてテーブル型に更新することで、食卓や執務作業など様々な用途に使いやすく、また子供にとっても火に手が届きにくい安全に配慮されたデザインとしている。 日本独自の囲炉裏の文化と様式を現代的にアップデートしながら、古来より受け継がれてきた宮大工技術により緻密に作り上げた本作が、日本文化の魅力を広く世界に発信することを願っている。